意思決定支援ツールの JTBD landscape — 既存ツールは「どんな job」に仕えているか (3モデル Deep Research)
調査日: 2026-06-01
調査者: [email protected]
調査モデル: OpenAI o3-deep-research / Gemini deep-research-preview / Claude Opus 4.7 (Managed Agents) — 同一プロンプト
個別結果: OpenAI / Gemini / Claude
コスト: OpenAI $2.28 / Gemini $1.12 / Claude $1.65(合計 ~$5.1)。OpenAI は無指定で TPM 200k 超過により3回失敗 → OPENAI_MAX_TOOL_CALLS=20 で再実行成功(→ 既定 25 化 PR #1271)。
0. 調査の動機
Decision Pipeline (ADR 起案を半自動化する LangGraph TS on Cloudflare Workers) は本番稼働しているが、
「意思決定」という job を誰が何のために雇うか=JTBD が未定義。JTBD SSoT (_jtbd_list.md, ADR-0043 標準) は
JTBD-001〜012 すべて会計ドメインのエンドユーザー job で、Decision Pipeline 自身が仕える job は空白。
この空白が「MVP exit 基準が決まらない/現ドラフトの必須・後回しが切れない」根因。
本 RQ は JTBD 定義の前段として、既存ツールが「どんな job」に仕えているかの landscape を 3 セグメント
(ソロ作り手 / チーム・SaaS / 汎用ナレッジワーカー)で撮る。
先行 RQ-058(JTBD 完了の定量評価)/ RQ-062(意思決定品質データ戦略)/ RQ-064(意思決定バイアス)は前提とし再調査しない。
1. サマリー(3モデル統合結論)
3モデルが強く一致した中核命題:
ADR ツールは decision memory(記録・ガバナンス)を売っており decision making ではない。 adr-tools / Log4brains / MADR は「なぜその技術選択をしたか」を保存し将来の盲目的な反転・再議論を防ぐのが job。 どの選択肢が最適かの評価は明示的にスコープ外で、人間が判断する前提(3モデル一致)。
意思決定の job は 3 つの軸に分かれ、単一ツールが全部を覆っていない(Claude の整理):
- memory(記録・traceability)= ADR ツール
- alignment(合意形成・可視性)= Loomio / Confluence / DACI / Log4brains
- quality(分析・スケール)= Decision Intelligence Platform(DIP, エンタープライズ)
セグメントで job が質的に変わる(OpenAI の matrix が最も明快):
- ソロ作り手 = 速度・低摩擦。「決めた理由を素早く記録し開発を止めない」。memory 中心。
- チーム/SaaS = 合意・traceability・onboarding・accountability。rigor 高め。
- 汎用ナレッジワーカー = 後悔しない・説明できる選択。MCDA(1000minds 等)で構造化。
ソロ作り手の "意思決定そのものを下す" job が最も未充足。 ADR ツールは「もう決めた」前提で記録するだけで、選択肢の評価を導く専用ツールは事実上無い。 ソロは汎用 LLM を ad-hoc な "virtual co-founder / sparring partner" として使っている(Gemini)。 → 「making + recording を統合した、ソロから始めてチームへスケールする意思決定ログ」が市場の空白(OpenAI が明示し 「これはまさに我々のパイプラインが進む軌道かもしれない」と指摘)。
AI-native シフトが job 境界を上下に広げている: ADR ツールは下流の enforcement(ADR Kit が ADR を lint ルール化し drift 防止)へ、 copilot は上流の option 生成/ドラフト(ChatPRD・architecture copilot)へ。ただし最終判断は人間に残る(ADR Kit「agents make smart decisions, tools handle reliable automation」)。
2. 設問別の突合
Q1 ツール landscape と job framing
| カテゴリ | 代表ツール | 中核 job | 明示的スコープ外 |
|---|---|---|---|
| ADR / decision-record | adr-tools, Log4brains, MADR, ADR Kit | 技術選択の rationale を保存し将来の盲目的反転・再議論を防ぐ | 選択肢の評価・最適解の算出。人間が決める |
| Decision Intelligence / 支援 | Gartner DIP, Peak, Cloverpop, Teradata, 1000minds, Wizer | データ/分析/AI で意思決定の質・効率を上げる(スケール) | goal 設定・最終承認・accountability は人間 |
| AI copilot | ChatPRD, architecture copilot, ADR Kit (AI), 汎用 LLM | ドラフト生成・option 提示・速度(augmentation) | 文脈・nuance の最終判断。human oversight 必須 |
Q2 セグメント別の job 差
- ソロ: 速度 > rigor、コラボ機能不要、audit は「半年後に自分が理由を思い出せる」程度。job=個人の記憶と継続。
- チーム/SaaS: コラボ・レビュー/承認・version control・onboarding・accountability。rigor 高、alternatives/consequences を要求。
- 汎用ナレッジワーカー: 構造化思考(MCDA・pros/cons・意思決定キャンバス)、bias 低減、説明可能性。標準手法が無く道具が断片的。
Q3 outcome / "decision done" シグナル
traceability(rationale 記録)/ onboarding 速度短縮 / 合意・sign-off / decision latency 短縮 / regret 最小化("decisions you can trust")/ ビジネス KPI(DIP)。 具体メトリクス例(Claude): Cloverpop 28日→7日、Aera 40%作業削減・70%採用、Catio アーキ80%改善、ChatPRD ドラフト80%短縮、Copilot 55%生産性。
Q4 gap / 未充足
- ソロの making 誘導(記録でなく「どう決めるか」)が未充足 → AI-native decision guide の機会。
- 汎用意思決定の統一解が無い(spreadsheet/slide に逃げる)。
- ソロ→チームのスケール経路(軽量に始めて多人数 KB へ滑らかに育つ意思決定ログ)が未提供 ← 我々の射程と最も合致。
- decision→outcome のフィードバックループ(決めた後の結果を学習に戻す)がほぼ未対応。
3. セグメント別 job-statement 候補(landscape 由来・descriptive)
既存ツールが framing している job の記述であり、我々の確定 JTBD ではない(次タスクで ADR-0043 の 3軸テストに通す)。
- ソロ作り手: 「一人で開発中に重要な技術判断をしたとき、理由を軽量に素早く記録し、開発フローを止めずに後から参照・自信を持って次の判断ができるようにしたい」
- チーム/SaaS: 「チームが重要な判断をするとき、共有・構造化されたプロセスで評価・記録し、全員が rationale を理解し、再議論や矛盾する選択を避け、新メンバーが素早くキャッチアップできるようにしたい」
- 汎用ナレッジワーカー: 「複雑・高 stakes な判断をするとき、一貫した基準で選択肢を比較する仕組みで思考を構造化し、後悔せず他者に説明できる選択をしたい」
4. 市場での job 定義の明確さ
- 最も明確: 開発者向け ADR(「アーキ判断を将来参照のため記録する」= Nygard/Fowler 以来の確立した実務。境界も既知)。
- 最も曖昧: 汎用ナレッジワーカーの意思決定(支配的フレーム/成果物が無く、ツールが断片的。"decision tool" で検索されない)。
- 中間(形成途上): チーム/エンタープライズ("Decision Intelligence" で結晶化を試みるが概念が広く vendor ごとに位置づけが割れる)。
5. 我々への含意(JTBD 定義への接続)
- 我々の幹は「ソロ作り手の making+recording 統合」= 市場の空白かつ最も射程に合う。 ADR ツール(memory のみ)でも DIP(エンタープライズ)でもない。 Decision Pipeline は triage→盲点検出→本文生成→採点→検証→…→採番で「下す」を支援しつつ ADR に「記録」する = making と recording を1動作で繋ぐ点が差別化。
- **将来 SaaS は「ソロ→チームへ滑らかにスケールする意思決定ログ」**として、未充足のスケール経路を埋める方向が landscape と整合。
- **AI-native の境界拡張(enforcement = ADR Kit 的 lint 化 / option 生成)**は現ドラフト(entry-unification, review-tiering 等)の位置づけにも効く。enforcement・drift 検知は ADR-0098(verified-as-of)と接続。
- 定義の難所: 汎用セグメントは曖昧 → そこを狙うなら市場教育が要る。ソロ/開発者セグメントの確立した ADR job に寄せるほど positioning は明確。
6. 次アクション
- 本 RQ を入力に 意思決定の JTBD を ADR-0043 の 3軸テストで起案(making+recording 統合 / ソロ→SaaS スケール経路を中核仮説に)。
- JTBD 確定 → MVP exit 基準を定義 → 現ドラフト(entry-unification / review-tiering / ADR-0095 Phase B 等)を必須 vs v1.1に仕分け。
- Q4「ソロの making 誘導が薄い」が顕著なら、そのセグメントだけ後追い RQ で深掘り(段階方針)。
関連
- ADR-0043(JTBD 粒度定義標準, 3軸テスト)/ ADR-0019(Pipeline 移行)/ ADR-0098(verified-as-of, doc-impl drift 検知)
- 先行 RQ: RQ-058(JTBD 完了の定量評価)/ RQ-062(意思決定品質データ戦略)/ RQ-064(意思決定バイアス)
- JTBD SSoT:
docs/_internal/01_discovery/customer_insight/_jtbd_list.md - 生出力(gitignore, main tmp):
tmp/deep-research/decision-jtbd-landscape/