ADR・技術文章における「構造のわかりやすさ要件」— ミント ピラミッド原則
文書を認知負荷の低い構造で書くための基準を、バーバラ・ミント『考える技術・書く技術』(ピラミッド原則) からまとめたもの。2026-06-10 に Web 調査して収集。 結論を先に: わかりやすさには 2 つの軸がある。文の軸(一文一義・短文・専門語定義)は姉妹文書 日本語のわかりやすさ要件 が扱う。本書は 構造の軸(結論先行・SCQA 導入・MECE グルーピング・縦の Q&A 整合) を扱う。当リポの冒頭サマリー「決定の早わかり」(ADR-0107 パイロット → ADR-0138 で全新規 ADR に必須化・Y-statement 箇条形)は、ミントの SCQA 導入と構造的に同型であり、本原則の裏づけがある。 リンクは収集時点のもの。URL は時間で陳腐化しうる。
なぜ構造の軸が要るか
文を 1 つずつ平易にしても、節の並びと見出しの階層が場当たりだと読み手は迷う。読み手は「何が結論か」「この節はどこに効くのか」を探すたびに認知資源を使う。ミント原則は、その探索コストを構造で消す方法を体系化している。出発点は次の一文に尽きる。
結論を頂点に置き、各メッセージはその下位の要約になっている — これを全階層で守ると、読み手はどの深さで読むのをやめても要点を取り違えない。
A. ピラミッド構造の基本(高確度・原典)
- 頂点に主メッセージ 1 つ — 文書全体で最も伝えたい結論を 1 つに絞り、最上段に置く。
- 思考はボトムアップ・伝達はトップダウン — 考えるときは根拠→結論の順に積み上げてよいが、書くときは逆に結論から先に出す。読み手の発見の旅を追体験させない。
- 各メッセージは下位グループの要約 — 上の階層の見出し・一文は、その下にぶら下がる要素を漏れなく言い表していること。要約になっていない見出しは構造の破れ。
B. 3 つの下部構造(ピラミッドを成立させるルール)
B-1 縦の関係 = 疑問と答えの対話
- 上位メッセージは読み手の頭に疑問を呼び、下位がそれに答える。文書全体が Q&A の連鎖になる。
- 検証キーワード: 上から下へ Why So?(なぜそう言える?)、下から上へ So What?(つまり何が言える?)。両方向で噛み合えば縦は健全。
B-2 横の関係 = グルーピング
同一階層に並ぶ要素は次の 3 条件を満たす。
- MECE(モレなく・ダブりなく) — 重複も漏れもない部分集合に分ける。
- 論理的に同種 — 同じ種類のもの(原因なら原因、手段なら手段)だけを並べる。
- 論理的な順序 — 時間順・構造順・重要度順など、読み手が予測できる順に並べる。
B-3 横の論理の型 = 演繹法と帰納法
- 帰納法(同種の観察をまとめて 1 つの結論を導く) — 速く吸収でき、経営者・非専門の読み手に推奨(ミントが既定で勧める型)。
- 演繹法(大前提→小前提→結論の連鎖) — 読み手が結論に抵抗しそうな時に、否定しにくい前提から積んで結論を不可避にする。
- 1 つのグループ内で帰納と演繹を混ぜない。どちらの型かを決めて並べる。
C. 導入の型 = SCQA(物語的な書き出し)
冒頭は読み手を主メッセージへ自然に導く 4 拍子で書く。
| 要素 | 中身 | 読み手の状態 |
|---|---|---|
| Situation(状況) | 読み手が既に知っている事実から入る | 「知っている」=安心して読み始める |
| Complication(変化・問題) | その状況に起きた変化・困りごと | 「おや?」=緊張が生まれる |
| Question(疑問) | C から自然に湧く問い | 「ではどうする?」=答えを欲する |
| Answer(答え) | =文書の主メッセージ(ピラミッド頂点) | 疑問が解消される |
→ S→C→Q で読み手の疑問を作ってから A を出すと、結論が「唐突」でなく「待っていた答え」になる。
D. 当リポの「決定の早わかり」(Y-statement)との対応(重要)
§D の状態 (2026-06-12 → 2026-06-22): 本節 §D-2 は ADR-0138 で「本文内必須化 + adr-lint 強制」を正典化したが、ADR-0146 (2026-06-12 受理) で「本文内必須化を派生ビューへ置換」となり、本文には早わかり節を書かない方針へ移行した。受理後生成の派生ビュー (
scripts/generate-quick-summary.mjs) が結論先行+疑問形ラベル 8 箇条を出力する。型の意味 (§D-1) は不変。§D-2 (適用範囲・本文内配置・adr-lint 強制) 全体の書き直しは ADR-0146 §決定 #6 (移行順序) に従って doc 役割で別 PR (ADR-0146 followups) で実施する。本注記は派生ビュー方針が docs へ完全反映されるまでの暫定。
ADR-0107 でパイロット化した冒頭サマリー「決定の早わかり」は、当初 6R 型(状況/問題意識/要求/Reason/Range/Result)で書き、ミントの SCQA 導入と同型であることを確認した。その後 6R は本文と冗長だったため Y-statement(箇条)へ圧縮した。SCQA との対応は圧縮後も保たれている。
| ミント SCQA | Y-statement(現行) | 6R(初期形・参考) | 役割 |
|---|---|---|---|
| Situation | 文脈 | 状況 / Real Situation | 既知の事実から入る |
| Complication | 問題・問題点 | 問題意識 / Recognition | 変化・困りごとを示す |
| Question | 課題 | 要求 / Requirement | 解くべき問いを定める |
| Answer | 決定(対応策)・目的・代償 | Reason / Range / Result | 主メッセージを展開 |
D-1. 意味の型 = 4 階層連鎖(問題 → 問題点 → 課題 → 対応策)
サマリーの各ラベルは、次の 4 階層で定義する(ADR-0107 で実証)。
| 階層 | 定義 | 多重度 |
|---|---|---|
| 問題 | 困っている結果・実害 | 1 |
| 問題点 | 工夫で直せた・コントロール可能だった原因 | 問題に対して 1 つ以上 |
| 課題 | 問題点の発生を阻止するために行うこと | 問題点ごとに 1 つ以上 |
| 対応策 | 課題を解決するための具体的なアクション群 | 課題ごとに 1 つ以上 |
身近な例で通すと: 遅刻で信頼を失った=問題。重要な日と知りつつ目覚ましが 1 つだけ=問題点。起床手段を冗長化する=課題。目覚まし 2 台目・スマホアラーム・家族への声かけ依頼=対応策。
- 前提: 解決を課題に立てない問題点は「前提」(与件)として受け入れる。前提には 2 種類ある。
- 時間的与件 = 今すぐ解決できない問題点。例: ADR-0107 のメタデータ欠落(抽出器では直らず別途バックフィル要)。
- スコープ的与件 = この問題空間の外(より基礎的なレイヤの規律・別の決定)で扱うべき問題点。例: ADR-0107 の「索引の陳腐化」(導出物手書き禁止という運用規律の破れであり、資産化の問題空間に先立つ)。
- 行き先必須: スコープ的与件として前提に送るなら、解決を所有する ADR・規約への参照(行き先)を必須とする。許容形は 2 つ(ADR-0142 で確定・2026-06-12): (i) 解決を所有する既存 ADR・文書の名指し、(ii) 行き先が未起案なら ADR-0130 パターン(起票義務+期限+撤退条件トリガーの明記)。どちらも満たせなければ、先に受け皿を作るか、問題空間内に留める。行き先のない前提は「規律の出典は? 破れの所有者は?」という審査の盲点指摘で宙に浮く。
- 前提作業: 前提は「受け入れて終わり」とは限らない。本決定が前提の回復を引き受ける場合は、対応策に前提作業として明示する(例: メタデータ欠落 → バックフィル / 索引規律の破れ → 索引の自動生成が準拠を回復)。規範の所有(行き先 ADR)と回復の実行(本決定)を分けて書くと、両方の所在が閉じる。
- トリガー種別(改善/問題対応/法令対応 等)を文脈に明示する案は不採用。文脈は状況の提示に徹する。
D-2. 読み筋(箇条の並び)と本文との対応
Y-statement の箇条は次の順に並べる。
文脈 : 状況(問題ではない)
問題 : 実害(困っている結果)
問題点と課題 : 原因 → やること を 1 行 1 ペアで箇条書き(課題が複数なら行を分ける・多重度は D-1 の 1:N)
前提 : 解決を課題に立てない問題点(与件。2 種類と行き先必須は D-1)
決定(対応策) : 対抗案でなくこの案を選ぶ(具体の打ち手)
目的 : 目指す到達状態(実害の裏返しでなく前向きに言い換える)
代償 : 受け入れるコスト
本文とは「課題=目標節(ADR-0107 では §1.5 の 4 機能)」「対応策=決定節(§4)」で対応させる。こうするとサマリーと本文が縦の Q&A(Why So?/So What?)で噛み合い、B-1 の検証がそのまま効く。
同語異義に注意: 本文テンプレ §1.3 の見出し「課題 (Problem)」は、ここでいう課題(=やること・§1.5 目標に対応)ではなく D-1 の問題・問題点(痛みポイント)を指す。早わかりの「課題」と本文 §1.3 の「課題」は別語義なので、7 箇条の縦整合を名前で突き合わせるときは早わかりの課題 → 本文 §1.5 目標に対応させる(§1.3 ではない)。
末尾の定型注記(必須): 箇条の末尾に「詳細は本文の影響・撤退条件セクションを参照のこと」を必ず置く。早わかりが公式の要旨として単独引用されたとき、本文の前提条件・代償が伝わらないまま意思決定が行われるのを防ぐ(ADR-0138 §5.2)。
適用範囲(ADR-0146 で派生ビューに移行): 「決定の早わかり」は ADR-0138 で本文内必須化されたが、ADR-0146 (2026-06-12 受理) で本文から外し、受理後に本文から自動生成する派生ビュー (結論先行+疑問形ラベル 8 箇条) へ移行した。scripts/generate-quick-summary.mjs が PR 本文と docs サイトの両方へ注入する。既存の本文内早わかり節 21 本 + TL;DR 3 本は ADR-0146 §決定 #6 の移行順序に従って doc 役割が一括削除する PR を起票する。型の意味 (§D-1) と末尾の定型注記は不変のまま派生ビューに引き継がれる。
D-3. 発散の検問 4 つ(上流) — 決定ガバナンス 4 つ(下流)との対
読み筋の連鎖は 4 か所で発散する(1 つから複数へ広がる)。各矢印に検問を置く。
文脈 ─(1)→ 問題 ─(2)→ 問題点 ─(3)→ 課題 ─(4)→ 対応策
| # | 矢印 | 検問(答えられなければ分析の破れ) |
|---|---|---|
| 1 | 文脈 → 問題 | その問題は本当にこの文脈から生じたか。文脈と無関係に成り立つ要素が混ざっていないか。混ざっていたら塊が複数ある — 1 つに圧縮せず分けて明示する / 決定対象の型(新要素・横断規約・技術/プロセス選定)を確認する: 複数に該当するだけなら許容(ADR-0030)、型ごとに独立した決定が同居しているなら塊複数(下の注記) |
| 2 | 問題 → 問題点 | モレ: 問題点を全部直せば問題(実害)は消えるか。残るなら問題点が足りない / ダブり: 同じ原因の言い換えが 2 つないか / 同種: 全部「コントロール可能な原因」か。直せない・この問題空間の外のものは前提へ送る(前提の 2 種類と行き先必須は D-1) |
| 3 | 問題点 → 課題 | その課題をやり切れば問題点の発生が止まるか(再発防止になっているか、対症療法ではないか) |
| 4 | 課題 → 対応策 | 対応策群で課題は解決するか。どの課題にも紐づかない宙に浮いた対応策(やりたいだけの施策)が混ざっていないか |
縦方向は B-1(Why So?/So What?)、横方向は B-2(MECE・同種・論理順)を、4 階層連鎖に具体化したもの。
決定対象の型(Kruchten)と塊の関係(検問 1 の注記): 1 つの決定が複数の型の側面を持つことは元々許容されている。ADR-0030 が「複数可」と明記し(例: OAuth 採用 = 技術選定であり新要素であり品質特性)、受理済み ADR の約 7 割(2026-06-11 実測)が複数型ラベルである。塊複数のサインになるのは、型をまたぐ要素を 1 文の決定に圧縮できず、独立して撤退できる別決定として同居しているとき。判定の問いは「ラベルが複数か」ではなく「1 文に収まるか・別々に撤退できるか」。補助シグナル: 判断基準のドライバー・承認者・検証 KPI/撤退トリガーのいずれかが分かれる場合も塊複数を疑う(RQ-097 の 4 発散シグナル)。
機械検査とビューの対応(ADR-0142 で確定・2026-06-12): 検問 4 つ+前提の行き先解決は、② 受付のプリゲートが 2 段判定(一次 = 属性分岐シグナル/二次 = 主張グラフへの構造化分解+決定論的ルール)で機械検査する。語彙の規律は概念 1 つ・ビュー 2 つ。起案者が書くのは本節のミント連鎖(文脈→問題→問題点→課題→対応策)のままで、主張グラフ(IBIS: 問い/案/論拠)はゲートが内部で使う機械表現にすぎない。検問 1(塊の混在)と機械側の「root の問いが 2 つ以上 ⇒ 塊複数」は同じ検査の人間向け・機械向けの表現で、起案者に新しい書き方は要求しない。なおプリゲート pass が意味するのは検問 4 つ+行き先解決の通過のみで、分析全体の正確性は保証しない(検出の主体は引き続き人間レビューと併走・ADR-0142 §5.2)。
これと対になる下流のガバナンスチェック 4 つ(可逆性・ドライバー・承認者・検証 KPI)と、どの検査をどの層が所有するかの全体像は §G(検査の所有・5 層モデル)を参照。上流 4 つの制度化の現況は付記の残論点台帳(Q2)を正とする。
E. ADR 本文への適用示唆
冒頭(Y-statement サマリー)で結論先行は達成していても、本文(コンテキスト〜影響)が場当たりだと構造の軸は未達。本原則を ADR 本文に翻訳すると次のチェックになる。
| 構造チェック | 対応する原則 | 見るところ |
|---|---|---|
| 各見出しは、その節の中身の要約になっているか | A-3 | H2/H3 見出しを拾い読みして筋が通るか |
| 課題・代替案・影響など、並列要素は MECE か | B-2 | 重複・漏れ・粒度のばらつき |
| 並列要素は論理的な順序か(重要度順 / 時間順) | B-2 | 箇条書きの並び |
| 主張と根拠が So What?/Why So? で噛み合うか | B-1 | 決定 ↔ 判断基準 ↔ 採点の縦の整合 |
| 冒頭が S→C→Q→A になっているか | C / D | Y-statement サマリーの順序(D-2) |
| 1 つの節で帰納と演繹が混ざっていないか | B-3 | 論証の型の一貫性 |
→ ADR は機械が見る構造(frontmatter・必須見出し・採点表)を温存しつつ、見出しの要約性・並列要素の MECE 性・縦の Q&A 整合を満たせば、構造の軸を達成できる。
F. 確立度が高い構造要件 トップ7
- 結論を頂点に 1 つ・トップダウンで伝える — ピラミッド原則の根幹
- 各メッセージは下位グループの要約 — 拾い読みで要点が崩れない条件
- 縦は Why So?/So What? で噛み合う — 主張と根拠の整合
- 横は MECE・同種・論理順 — 並列要素のグルーピング規律
- 導入は SCQA — 結論を「待っていた答え」にする
- 経営者向けは帰納法を既定に — 速く吸収できる
- 抵抗が予想される結論は演繹法 — 前提合意で不可避にする
G. 検査の所有(5 層モデル)
起案から受理後まで、検査は 5 つの層に分かれる。一言でいうと「① で自分が直し、② で門前で止め、③ で機械が深掘りし、④ で人間が決め、⑤ で経年劣化を見張る」。各検査は 1 つの層が所有する。所有とは、その検査を根拠に差し戻す権限を持つことを指す。同じ観点が複数の層に現れてよいのは「リハーサル(① 作成時の自己点検)と本番(所有層)」の関係に限り、本番の検査を 2 つの層に置かない。差し戻しを持たない情報提供型の検査は、走る層に帰属するが ④ の人間判断の材料になるだけで、差し戻し権限を持たない。
G-1. 5 層の表
| 層 | 主体 | 所有する検査 | 差し戻しの形 |
|---|---|---|---|
| ① 作成時 | 起案者+Claude(ローカル・反復自由) | 所有なし。全検査の自己点検版を提供する層(テンプレ準拠・Y-statement 1 文テスト・checkTriageGate のローカル実行・D-3 検問のセルフチェック) | 自分で直す |
| ② 受付 | DRP 入口(Gate 0・投入直後に即応答) | 形式 = 必須節の存在+数値(静的 4 検査 = ADR-0088 のコスト試算検査+ADR-0091 の 3 lint ルール)。分析(上流) = D-3 検問 4 つ+前提の行き先解決 — ADR-0142 で受理済み・実装待ち(現況の正は付記の残論点台帳 Q2) | 差し戻し(判定理由を telemetry データベース〔Cloudflare D1〕に記録) |
| ③ 審査 | DRP 本体(LLM 審査グラフ) | 頑健性(下流)。差し戻し権限あり = 本文の採点(Mode 別閾値)・Cross-Validation(盲点×Must 軸。body 後の単一段で実行)・過去 ADR 整合。情報提供のみ = 盲点検出・3 モデル並列レビュー・会社方針整合。頑健性とは、下した決定が運用の現実に耐える性質を指す(戻せる・選定理由を検証できる・責任が明確・守られているか観測できる) | 採点の閾値未満差し戻し・整合 CONFLICT 差し戻し・Cross-Validation 差し戻し(回数上限つき・ADR-0109)・escalate |
| ④ 受理 | PR(CI+人間) | 実装整合 = adr-lint・型付き辺・nav 登録。早わかり 7 箇条の型・中身確認(人間レビュー・operator_guide §4.4 / ADR-0138)。Pipeline 補強一覧の項目単位の明示承認 = Gate 1 盲点に対し本文が起案者の生テキスト外で織り込んだ補強策(③ の Cross-Validation が bodyOnlyMitigation=true で Accept したもの)を、人間が PR 本文のチェックボックスで項目ごとに承認(ADR-0150・下記 §G-3)。受理の最終判断は常に人間が所有する(merge=受理 / close=却下) | CI block(adr-lint・型付き辺・adr-reinforcement-checklist の未チェック残)・PR close |
| ⑤ 受理後 | 運用(月次・四半期) | 経年劣化 = 辺の意味監査(ADR-0117/0133)・早わかり形骸化の月次集計(ADR-0138) | 是正 PR・再評価トリガー |
G-2. 下流ガバナンス 4 つの機械検査の所在
下流ガバナンス 4 つは ADR テンプレートの節として制度化済み。ただし機械検査の所在と濃淡は項目ごとに違う。
| 下流チェック | ADR の節(制度化済み) | 機械検査の所在 |
|---|---|---|
| 可逆性 | 撤退条件(再評価トリガー・ロールバック手順) | ② 受付(数値の存在のみ) |
| ドライバー | 判断基準(Decision Drivers・MCDA) | ④ 受理 PR の adr-lint |
| 承認者 | Approver Role/Who・判定主体 | ④ 受理 PR(adr-lint 静的 3 ルール approver-meta / approver-role-enum / approver-role-scope-match + CI adr-approver-merge-check の merge 者一致。ADR-0141・ADR-0145 以降に適用) |
| 検証 KPI | Confirmation(準拠確認・Fitness Function) | ② 受付(数値の存在のみ) |
審査基準は上流(分析)と下流(ガバナンス)の両方が要る。 下流 4 つが全て PASS でも、上流の分解が崩れた ADR は通ってしまう。実例: ADR-0107 は起案前ゲート・審査を通過したが、問題点「索引の陳腐化」が文脈(資産化への期待)と無関係な別の塊(本数や期待に関係なく守るべき規律の破れ)である点は、人の対話まで検出されなかった。このとき決定対象ラベルは実ラベルどおり「新要素(Existence)/技術・プロセス選定(Executive)」の 2 つ併記で、うち紛れ込んだ規約(Property)の側面は独立して撤退できる別決定(のちの ADR-0130・Executive/Property)だった — 複数型ラベル自体は許容(D-3 検問 1 の注記)だが、この型またぎは塊複数の見えるサインだった。逆に上流だけだと、分析は正しくても撤退できない・誰が承認したか不明な決定が通る。
G-3. 層の見分け方と差し戻す権限
層の見分け方: ② は「起案の文章が分析として成立しているか」を見る。上司が部下の起案文書をレビューして論理矛盾を指摘し、直させる位置に当たる。③ は「成立した分析に見落としや弱さがないか」を見る。目的が違う検査なので、同じ層に同居させない。
差し戻す権限の整理:
- ① は権限を持たない。差し戻す相手がいない層で、自分で直すだけ。
- ② と ③ が持つのは「先に進ませない」権限。④ は「決める」権限。⑤ は厳密には差し戻しではなく「決めた後に見直しを起動する」権限(是正 PR・再評価トリガー)。
- 同じ観点で差し戻せる層は 1 つだけにする。二重審査は責任の所在を曖昧にし、差し戻しループの温床になる。
- 機械の権限はすべて途中で止める権限にとどまる。決定を採用するかどうかの最終権限は ④ の人間だけが持つ(ADR-0109 の escalate 終端と同じ思想)。
- ③ → ④ への権限移動の実例(ADR-0150): Cross-Validation(③)は当初「本文だけにある補強策(
bodyOnlyMitigation)」を割り引いて差し戻していた。だがこれは、パイプライン自身が Gate 1(socratic)で出した盲点指摘を本文が設計どおり織り込んだものを ③ が「根拠なし」と却下する自己却下を生んだ(実測で CV 却下の 18% がこれ単独起因)。ADR-0150 でbodyOnlyMitigationは ③ の差し戻しを駆動しない観測フラグへ格下げし(③ は finding を neutralize しない無関係加筆の純粋捏造ガードのみ保持)、補強の採否判断を ④ の「Pipeline 補強一覧」(PR 本文のチェックボックス・CIadr-reinforcement-checklistが未チェック残で merge をブロック)へ移した。上記「同じ観点で差し戻せる層は 1 つだけ」の適用例にあたる。
根拠(2026-06-11 コード実査): ② の静的検査は checkTriageGate の 3 lint ルール(placeholder 検出・撤退条件の数値・Confirmation の KPI 数値)と、その前段で走る ADR-0088 のコスト試算検査の計 4 つで、いずれも「節・キーワードの存在+数値」しか見ていない。承認者(Deciders)の意味検査は実査時点で全層に存在しなかった(2026-06-12 追記: ADR-0141 受理・同日 main 実装完了で ④ 層の検査が稼働。新規 ADR は Approver 4 欄へ分解し ADR-0145 以降に適用)。
主な出典
- バーバラ・ミント『新版 考える技術・書く技術 — 問題解決力を伸ばすピラミッド原則』山崎康司 訳、ダイヤモンド社
- 安達裕哉「マッキンゼーのビジネス文書スタンダード『バーバラ・ミントのピラミッド原則』を詳しく解説する」note
- 「ピラミッドストラクチャーとは|作り方を図解解説」Mission Driven Brand
- ModelThinkers "Minto Pyramid & SCQA" / DeepRead "The Pyramid Principle (Book summary)"
付記: 残論点台帳(次に当たるべき未解決の論点)
残論点の現況は本台帳を正とする(本文中の状態記述は本台帳へのポインタにとどめ、分散させない)。状態が変わったら本表を更新する。 「実装完了で〜を解消し本行を削除」類の反映義務は、該当 ADR の frontmatter
followups:宣言にも機械可読で持たせる(ADR-0144で採用)。機械検知の入力は frontmatter が正で、本表の散文は人間向けビュー。
| # | 論点 | 行き先・確定トリガー |
|---|---|---|
| Q2 | 上流の発散検問 4 つ(D-3)+行き先解決の検査の実装(決定は ADR-0142 で受理済み・2026-06-12・47/50・位置 = ② 受付・2 段判定。手法素材 = RQ-103 synthesis) | doc 完了(D-1 行き先許容形・D-3 機械検査注記・glossary・operator_guide §4.3.3/§7.15 ルーブリック)。残 = main = パイロット先行(受理済み 20 本+人工陽性 5 件・K.O. = FP 30% 超で不採用)→ 実装 2〜4 人日。main 完了で §G-1 表 ② の「実装待ち」を解消し本行を削除 |
| P2 | 過程痕跡の分離(「盲点#N 反映」34 本+「採点#N」3 本が本文に混入。文の軸の最優先課題) | Q1〜Q3 消化後に、規約起案か検査ルール化かを判断 |
| P3 | 粒度セルフチェックの機械強制化 | telemetry 蓄積後に再判定(2026-06-08 決定・operator_guide §4) |
| P4 | 受理後の塊ドリフト監視(ADR-0133 の監査は辺の型のみで、塊の再発は見ない) | Q2 = ADR-0142 受理済み(2026-06-12)につき検討可能。0142 実装の Confirmation 設計時か ADR-0133 拡張で扱う |
| P5 | 構造の良し悪しの数値化(文の軸の jReadability に相当する構造版指標)。当面は人手レビュー | 任意。指標候補が見つかったら検討 |
| P6 | ミント原則の 3 モデルディープリサーチ再検証(本書は Web 確認段階) | 任意 |
| P8 | followups 宣言の検知・lint の実装(決定は ADR-0144 で受理済み・2026-06-12・45/50。宣言形式 = frontmatter followups:〔schema/updated_at/on_done path+action/none_reason〕で doc 確定・起案テンプレに既定値埋め済み) | doc 完了(宣言形式確定+起案テンプレ・本台帳前文・glossary 反映)。残 = main = 検知スクリプト+CI wiring+adr-lint 宣言検査(1〜2 人日・申し送り済み)。main 完了で起案テンプレの暫定注記を確定記述へ更新し本行を削除 |